- この事件をどう見るべきなのか?
- 「ムフー!」との遺言を残して死んでいった男
- 「では・・・・という感じで・・・」挿入する男
- 通販番組のような提案をしてくる佳苗
- 細かい描写のせいで変態あつかいを受けてしたった寺田さん
- 備考:本書のインデックス
- 木嶋佳苗に関する他の書籍も読んでみることにした!
- 備考:うちの家にも毒婦はいた!
この事件をどう見るべきなのか?
本書は「平成の毒婦」こと木嶋佳苗事件の裁判傍聴のルポタージュだ。つきあっていた男から大金をむしり取り、練炭で殺す女。
本書をどう読みとくか?もちろん、したり顔でそれっぽく「社会の闇」や「被告の心象風景」的なことを書いてもよいだろう。でも凡庸だ。そんな書評はくさるほどネットに転がってるだろう。本書をどう読みとくか?それは・・・・
一級のコメディ劇として面白がる!
もちろん不謹慎だ。死者も出ている。でもこれは「道徳の授業」ではない。テキストは万人に開かれている。それをどう解釈するかは自由だ。善悪の彼岸から遠く離れた場所から僕は本書を紹介してみたい。そう。とにかく本書は笑えるのだ。悲劇であり喜劇。
人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ
「ムフー!」との遺言を残して死んでいった男
被害者を「滑稽」と紹介するのは問題があるのだろうか。でも滑稽なのである。そして物悲しい。男の悲哀がビシビシと伝わってくる。本書で最大のクライマックスは前半ページにいきなり出てくる。最初の被害者である大出さんと木嶋佳苗のメールでのやり取りの部分で。いわゆる「ムフー!事件」だ。
「嘉之さんは10年ほど彼女がいなかったと言っていましたが、女性に性欲は感じなかったのですか? 突然彼女ができても平気ですか」。そんな佳苗の挑発に、大出さんのテンションが上がっていくのが、手に取るように分かる。
「ぜひ泊まりに行きます! ムフー!」
「最初は合わなくても、だんだんよくなってくるから大丈夫ですよ。ムフフ」
「(相性の)確認のためにエッチするのもいいかも」
検事は大出さんのメールを読み上げる前に、「大出さんはもう語る口を持っていません。残されたメールを大出さんの口だと思って、真剣に聞いて下さい」 と言った。当然のことと思う。
それでも、佳苗からのセックスの提案に、ムフー! とユーモラスに返信する大出さんのメールをまじめに読み上げる検事に、そこは読み上げないでくれ、とお願いしたくなった。死してなお、佳苗に翻弄されるなんて!
著者の指摘は正しい。この証拠として読み上げられた履歴メール。「ムフー!」の部分を削除したら、何か大問題だったのだろうか。そこに事件の鍵をにぎる何かがあったのか。試しに「ムフー!」の部分を削除して読んでみた。僕は理解した。。。。
「ムフー!」の部分が無くても全く問題が無いことに!
真相は藪のなかだ。
(スポンサーリンク)
「では・・・・という感じで・・・」挿入する男
本書は裁判傍聴録だけあって「証言」のリアリティが素晴らしい。リアルであること。それは時に滑稽でユーモラスだ。佳苗との精巧シーンの描写も素晴らしい。
検事が聞く。「(射精に)ためらいは?」
E氏はおずおずと答える。
「最初はためらいがあったんですが、コンドームのことを聞いたらいいと言うので、では・・・・という感じで・・・・」
「どこに射精するのか被告人と話した?」
「特に・・・・」
「断りもなく膣内に射精したのか?」
「・・・・・最後はそうでした・・・」
素晴らしい描写だ。滑稽である。「ちょっとコンビニで唐揚げ棒、買ってくるよ!」というくらい気軽に「では・・・!」と挿入しようとする男。
そこにかぶせる検事。酔っぱらっているのか。裁判所という日本で最大級に真面目な場所で、素面で「断りもなく◎内に写生したのか?」だって。。。。セクハラオヤジと新入社員OLとのセクハラ・シーンを彷彿とさせる検事の質問。真剣に事件の真相を追うからこそ逆説的に男女の業の深さとアホさが浮きぼりになる。
このやり取り。「断りもなく◎内に写生したのか?」と質問しなかったら、何か大問題だったのだろうか。そこに事件の鍵をにぎる何かがあったのか。僕は沈思黙考した。やがて僕は理解した。。。。
エロい質問をしなくても、全く問題が無いことに!
真相は藪のなかだ。
通販番組のような提案をしてくる佳苗
佳苗は優秀な営業マンでもある。本書はビジネスマンにも必読の書だ。入金が完了するまでが営業マンの仕事だ。そしてお金がない顧客にでも財布のヒモをゆるめるテクニックもビジネスには必要だ。
お金を援助してもらおうというのに、卑屈になることは一切なく、むしろ苛立った調子で、「以前のメールにも書きましたが」と前置きした上で、3回の分割でもいい、ただその場合は金額があがる、という無茶苦茶な交渉を始めるのだ。
分割払い。ここまでクロージングされたらアウトだ。寺田さんはあっさりと累計130万円を振り込んでしまう。「分割でもいい。でも金額があがるよ!」って言われた時になんで質問しないんだろう。
僕は沈思黙考した。僕だったら振り込んだだろうかと。脳内の僕。今は銀行にいる。木嶋佳苗からとんでもない提案を受ける。やがて僕は理解した。
僕も「分割払いなんてラッキー!」と嬉々として振り込んでいたことに!
細かい描写のせいで変態あつかいを受けてしたった寺田さん
裁判とはそういうものなんだろう。細かくて、どうでもいい証言のなかに事件の真相の鍵が眠ってるんだろう。でも確実に「その部分のディディール、必要だった?」って箇所のオンパレードなのが本書の魅力だ。
佳苗によると、約束の時間から30分遅れて帰宅した寺田さんは「待たせたね」の一言もなく、段ボールを持とうともせず、「オジサンの匂い」がしたという。また、部屋に入ると寺田さんはすぐに着替えたが、ワードローブのスーツは全て古くさくて、センスのないものばかりだった。佳苗が料理を始めると、寺田さんはなぜか下半身だけシャワーを浴び、無言のまま書斎でパソコンを始めた。
下半身だけシャワーを浴び、無言でパソコンをする男。その説明、必要だったか?僕は司法の在り方に疑問をもった。僕は沈思黙考した。そして理解した。
こんなアホなブログ書いてるヒマにお風呂掃除をしないと奥さんに怒られることに!
我が家の毒婦を怒らせないよう、僕はお風呂の掃除をすることにしよう。
(終わり)
◎魔性の女に関する関連書籍
◎備考:木嶋佳苗に関するその他の論考
「木嶋佳苗こそ元祖キラキラ女子だよね!」ってレスをもらいました。激しく同意。佳苗はすごくチャーミングで会った人すべてを惹きつける女子力の持ち主なんですよね。
@kaerukun777 僕の中で、木嶋佳苗はキラキラアカウントの元祖だと思うんですよね。 https://t.co/Ropoudcwuv
— カズ@37歳婚活中 (@konkatsulab) 2015, 11月 29
@kaerukun777 料理、化粧、ファッション、旅行などで女子力の高さを見せつつ、時折下ネタを挟めて隙を見せるんですよね。そのバランスが絶妙で。ネット社会でこそ活きるバランス感覚だと思います。
— カズ@37歳婚活中 (@konkatsulab) 2015, 11月 29
備考:本書のインデックス
第1章:100日裁判スタート
やばい。私、振り回されてる/だまされる男たち/セックスをする男、しない男/セックスをする男、しない男/整形よりベンツ、ダイエットより料理教室/佳苗が男にあげたもの/佳苗ガールズ
第2章:佳苗が語る男たち
「名器」自慢に法廷内パニック/本命の男たち/ふつふつと湧く耐え難い嫌悪感/光がない佳苗の瞳/ついに死刑求刑
第3章:佳苗の足跡をたずねて
初めての罪/母との葛藤/佳苗が見た東京
第4章:毒婦
判決/毒婦
木嶋佳苗に関する他の書籍も読んでみることにした!
佐野眞一氏の「別海から来た女/悪魔祓いの百日裁判」も読書スタート。
木嶋佳苗の本を読書スタート。なぜ女は魅力的であり打算的であり献身的であり狡猾であり夢見がちでありリアリストなのか。木嶋佳苗からヒントを見い出してみる → 木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判 を Amazon でチェック! https://t.co/jAM7dUtlKh @さんから
— かえるくん地球を救う (@kaerukun777) 2016, 1月 24
佐野眞一氏の書籍を読んでみた!!書籍のクオリティは『微妙!』ってのが正直な感想。木嶋佳苗関連の他の書籍も掘ってみる!!!
◎佐野眞一氏の書籍の書評記事はこちら
備考:うちの家にも毒婦はいた!
毒婦は日常に潜んでいる。それは僕の奥さん。僕の奥さんは35年のマンションローンを僕に契約させ、そして。。。。。
◎その他の「詐欺」シリーズ
(スポンサーリンク)